大判例

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大阪地方裁判所堺支部 事件番号不詳 決定

主文

本件異議申立を棄却する。

理由

一、弁護人らの異議申立理由は、昭和四六年二月八日付異議申立理由書および同年二月二二日付異議申立書(追加分)記載のとおりであり、これに対する検察官の意見は同年三月八日付意見書のとおりであるからこれを引用する。

二、本件異議申立理由は要するに、(1)刑事訴訟法三二一条一項二号後段の規定は憲法三七条二項に違反する無効の規定であって、右刑事訴訟法の規定によって検察官面前調書を証拠とすることは許されない、(2)本件における大庭福光の検察官に対する供述調書記載の供述の方が公判廷における同人の証言よりも信用すべき特別の情況が存するとして同検面調書を採用した決定は右刑事訴訟法の規定の解釈、適用を誤ったものであり、ひいては憲法三七条二項に違反するというにある。

三、よって判断するに、先ず右(1)の点については、弁護人らが主張するような見解もあるが、それは少数説で、当裁判所はそのような見解をとらず、刑事訴訟法三二一条一項二号後段の規定は合憲と判断する(最判昭和三〇、一一、二九刑集九巻一二号二五二四頁参照)ので右主張は理由がない。

次に、右(2)の点については、刑事訴訟法三二一条一項二号後段の特別の事情とは、必ずしも外部的な特別な事情でなくても、その供述の内容自体によってそれが信用性ある情況の存在を推知せしめる事由となると解するのが判例(最判昭和三〇、一、一一刑集九巻一号一四頁)であるところ、本件では外部的な特別の事情として、大庭証人は本件の事件当時被告人西野晃正の経営する汲取業に被告人赤松敏雄と共に雇われていたものであり、被告人榊和己は被告人西野の姉婿にあたり、被告人北野正男も以前被告人西野の下で働いていた関係にあって、いずれも知合の間柄であるところ、大庭証人はその中で最年少であって、同証人からみて被告人らは兄貴分ないし親方などにあたり、現在ではそのような関係がなくなっているにしても、人情的に被告人らのために利益になる証言はしても、不利益になる証言はしたくない立場にあるばかりでなく、本件における同証人の刑事上の責任はすでに少年事件として試験観察のうえ不処分の決定を受けて終了しており、過去における右人的関係および同証人の証言時における本件刑事責任上の地位等を考慮すれば、被告人の面前たる当公判廷ではもっぱら自己が罪をかぶるような証言をして、被告人らをかばうような証言をすることが十分予想され、同証人の右のような立場は、外部的な特別の事情としてあげることができる。これに加えて供述内容自体を比較しても、(イ)公判期日における同証人の供述よりも、検察官の面前における供述の方が理路整然としているし、(ロ)検察官の面前における供述の方が客観的事情に合致するし、(ハ)被害者の当公判廷における供述と比較して検察官の面前における供述の方がより自然的で信用性が高いと認められる。けだし、同証人の公判廷における供述からは何故に足を踏んだだけの被害者に対し、その帰りを待ち伏せして、執拗なまでの暴行傷害を加えねばならないのか納得しがたいところであり、本件被害者の当公判廷における証言(被告人らから暴行・傷害を受けた旨明白に被害を述べている。)と比較しても、大庭証人の公判廷における供述(主として同証人が暴行を加えた旨述べている)よりも同人の検察官の面前における供述の方がより自然的で信用性が高いといえる。したがって本件では大庭証人の検面調書の供述の方を信用すべき特別の情況の存することが十分認められるからこの点についての弁護人らの主張も理由がない。よって刑事訴訟法三〇九条三項により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 栄枝清一郎 裁判官 弘重一明 浦上文男)

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